【美術館備忘録#1】DOMANI・明日展2021に行ってきました。前編

アート
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こんにちは。ナミです。

今回は、初の美術館レポートです。
昨年夏ごろから美術館巡りを始めたわたしですが、特に美術を専門的に学んでいるわけでもないド素人です…
このレポートは、あくまでもわたし個人が感じたことを記録に残しておくこと、また作品や展覧会についての理解を深めることを目的としたものですので、お手柔らかに読んでいただけると幸いです。

今回は、国立新美術館で行なわれていた『DOMANI・明日展2021』に会期ギリギリ滑り込んできました。
絵画、インスタレーション、映像など、かなりボリューミーな展示でした…

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DOMANI・明日展2021概要

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『DOMANI・明日展2021 文化庁新進芸術家海外研修制度の作家たち』
会期:2021年1月30日(土)~3月7日(日)(会期終了)
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京・乃木坂駅)
出展作家:大田黒衣美、利部志穂、笹川治子、髙木大地、新里明士、春木麻衣子、山本篤
     竹村京、鬼頭健吾、袴田京太朗
備考:写真撮影、SNS投稿共に可

毎年、年の初めに国立新美術館で開催されている「DOMANI・明日展」。
今年で23回目を迎えます。

今回の展示では、過去10年間に文化庁の新進芸術家海外研修制度での研修経験をもった7人の新進作家と、それ以前に研修を経て、現在アートシーンの最前線で活躍する3人の作品が展示されていました。

サブタイトルは「スペースが生まれる」。
東日本大震災から丸10年を目前とした今、いまだ記憶に深い震災によって生じた空間/景観の余白と、stay homeで体験した時間的余白を経て、改めて何が本当に大事なのかを考え直し、次代への扉を開く時期を迎えているとの願いが込められています。
(『DOMANI・明日展2021』リーフレットより要約)

SNSで見かけて知った展示だったのですが、今年で23回目の開催とは驚きでした…
文化庁の取組についても、今回初めて知りました。
とても学びの深い展示だったなという印象。

新進芸術家海外研修制度について

会場内に入ると、まず新進芸術家海外研修制度についての説明のパネルがありました。

・新進芸術家海外研修制度(旧・芸術家在外研修)について
 本制度は、新進芸術家、学芸員および評論家、アートマネジメント担当者等がそれぞれ専門分野について、海外で実践的に研修するための渡航費及び滞在費を文化庁が支援するものです。将来の日本の文化芸術振興を担い、国際的に活躍する人材を育成することを目的に1967(昭和42)年に始まりました。初年度には、4名の派遣から始まりましたが、その後対象分野や派遣人数が拡大し、これまでに約3,600名の芸術関係者を支援してきました。
 現在、この制度では、美術、音楽、舞踊、演劇、映画、舞台美術等、メディア芸術を対象に、期間は1年、2年、3年、特別(80日)、短期(20~40日)及び高校生(350日)を設けています。研修を終えた多くの方々は、終了後も各自が研修を活かした積極的な活動を続け、多くが日本の芸術界を牽引する人材として、国内だけでなく国際的にも活躍しています。

こういった支援制度があるのも知らなかったし、制度に歴史があったり支援者の数もかなり多くてびっくり。
文化庁のホームページを見てみたら、洋画や現代美術のほかにも、声楽、バレエ、演劇演出、映画監督なんかもありました。
わたしでも知っている有名な方だと、狂言師の野村萬斎さんも研修生だったとか。
芸術って生業にするのが難しいものだから、こういった制度が芸術家の方の学びを支えることで、芸術家のタマゴたちが金銭的理由で諦めずに芸術を続けられる環境が整えられているのかなと思いました。

たしかに、歴史を学ぶときよく美術を見たりしますよね。
特に、絵画はその当時の時代背景を象徴するものとして教科書に載っていたりします。
そう考えると、後世に今を語り継ぐためには歴史を映し出す芸術の育成ってすごく大切なのではないかと感じました。

展示作品

ここからは、展示されていた作品の中で個人的に印象に残ったものを紹介していきます。

髙木大地さん(絵画)

2018年度(1年間)オランダ・ハールレムにて研修。
現在、神奈川県を拠点に活動。
鳥や木、雨、窓などの身近なモチーフを油彩で描いた作品が多数。

髙木大地「Window」(2020)

髙木さんの作品は、窓の作品が印象的でした。

髙木大地「Window」(2018)

ギャラリーという非日常的な空間に、生活に身近な窓が置かれている違和感。
しかも、その窓は空想的な色合いをしているのに、どこかで見たことがあるような印象を受けました。
この絵画から受ける寂しさや温かさといった印象は、自分がそういった同じような感情で見たいつかの風景と繋がっているのかもしれません。

利部志穂さん(現代美術、彫刻)

2006年度(2年間)イタリア・ミラノにて研修。
現在、東京都を拠点に活動。
生活の中で不要となったものや壊れた廃棄物などを解体し、それらによって形を作るのではなく空間配置により新たな関係性を生み出す制作を行う。

利部志穂「巨人―海からのやって来た人」(2021)

利部さんの作品は、立体作品や映像、写真など様々でしたが、個人的には利部さんの描く絵の色彩がとても好きだなあと思いました。

利部志穂「待つ/サーフガール・アマビエ、人魚」

わたしがビビッドカラーが好きだからと言ってしまえばそれまでなのですが笑
でも、パッと見たときの「あ、これ好きかも」っていう感覚ってすごく大事だなと思っていて、自分の好きなものをはっきりさせるという意味でも色々な展示に足を運びたいなと思っています。

言葉選びの仕方も、利部さんの世界観がよく表れていてすてきだなと思いました。

利部志穂「フォント―言葉を発する方法」(2021)

笹川治子さん(現代美術)

2019年度(短期)ドイツ・ライプツィヒ、ドレスデン、ベルリン、デュッセルドルフにて研修。
現在、東京藝術大学非常勤講師、茨城県を拠点に活動。
作戦記録画や戦中プロパガンダにおける虚実について研究するなど、戦時中にアートがどのようにメディアとして扱われ人々に影響を及ぼしたかに注目した制作や考察を行っている。

写真は撮り忘れてしまったのですが、画面に2種類の映像が並べて映し出されているという作品でした。

作品の詳しい説明がなかったので解釈があっているのかはわかりませんが、関係性の無いように思われる映像や写真を並べることで、今までの経験からの連想では思いつかないような印象を作り出すことができるという意図なのではないかなと思いました。

笹川さんの作品はこの1点のみ、しかも映像のみということでさらっとしか見ず、しかもこの考察も帰ってから思いついたことだったので、この印象づくりを体験できなかったのが残念…
映像作品を見るのが苦手なところがあるので、1人で行ったときこそこういう作品を楽しめるようになりたいなと思いました。

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大田黒衣美さん(現代美術)

2018年度(1年間)ドイツ・ベルリンにて研修。
現在、愛知県を拠点に活動。
うずらの卵やチューイングガム、石膏やビニールシートといった従来の絵画素材とは異なる素材を使った作品が多数。

大田黒衣美「sun bath」(2019―2020)

今回の企画展のリーフレットにも使われている「sun bath」という作品。
まさかチューイングガムと猫の背中でできているとは驚きでした。

この作品が生まれた背景もとても面白い。

「ある夜、アトリエに時々遊びに来る飼い主のわからない猫が丸くなって寝ている姿を眺めていた時、広いカーペットの上に呼吸する「即席の卓袱台(ちゃぶだい)」ができあがったように感じました。そこで、手近にあったガムをカットし、その卓袱台(寝ている猫の背中)に乗せて、携帯のカメラに収めたことがこの作品の始まりです。」(会場のパネルより引用)

大田黒衣美「sun bath」(2019―2020)

通常、作品を作るときは人が主体となってキャンバスに向かいますが、今回は逆。
猫という気まぐれなキャンバスがやってきたときにだけ作品を作ることができる。
すごく面白い発想ですよね。

他にもコラージュ作品もあったりと、個人的に好きな作家さんだなと思いました。

大田黒衣美「humid visibility」(2020)
大田黒衣美「napkins」(2019)

袴田京太朗さん(彫刻)

1994年度(1年間)アメリカ・フィラデルフィアにて研修。
現在、武蔵野美術大学教授、神奈川県を拠点に活動。
ベニヤ板やFRP、電気コードなどの素材を用いて、彫刻の表面と不可視の内部との関係性を問う作品を制作している。

袴田京太朗「軍神(頭部)―複製」(2020)

袴田さんの作品は、カラフルなアクリル板を用いたポップでどこか不気味なものばかりでした。
言葉では言い表せませんが、すごく不思議な感覚でした。

また、袴田さんの思う「コロナ禍での美術の変化」も考えさせるものがありました。

「東京の美術館やギャラリーがコロナによる緊急事態宣言で閉鎖せざるを得なかった2020年4月。僕は大きな窓のある恵比寿のMA2ギャラリーで、鑑賞者を入れない、外から観ることだけを目的とした展示をした。夜は一晩中明かりをつけ、通りすがりの多くの人に観てもらった。(中略)普通ギャラリーの展示を外から見るのは附属的なことのはずだが、ここには主体がなく、それしかない。するとふだん展示を観る美術好きの人と、通りすがりにたまたま覗いた人の立場が曖昧になり、「展示」というものが、より公平でニュートラルなものにリセットされたような感じがした。」

「同じ時期、多くの美術館では展示予定の作品たちが、鑑賞者に観られることがないまま、じっと息を潜めて再開を待っていた。(中略)その様子を想像したとき、狭義の「美術の死」の向こうに、なにかとても親密で、清潔な「新しい場所」が生まれていたのではないかと思う。」
(会場のパネルより引用)

袴田京太朗「闘う女―複製1,2」(2020)

コロナ禍での開催となった今回の展示で、世界的パンデミックと美術の関係性を知ることになるとは思ってもみませんでした。
たしかに、展示は観る人あってこそのもの。
見られない展示が存在する今、美術がどうしていくべきなのか。
袴田さんが感じたものは、ある種のパラダイムの転換なのかもしれません。

ボリューミーな展示ということで、前編・後編に分けてレポートをしたいと思います。
後編も是非ご覧ください。

【美術館備忘録#2】DOMANI・明日展2021に行ってきました。後編
こんにちは。ナミです。前回に引き続き、国立新美術館で行なわれていた『DOMANI・明日展2021』のレポートで...

最後までお読みいただきありがとうございました!

インスタグラムでも、展示の紹介をしています。
是非ご覧ください(^^)
@_seasidememories_

一部、国立新美術館HPに記載内容を要約。
DOMANI・明日展 2021 文化庁新進芸術家海外研修制度の作家たち|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO (nact.jp)

 

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