こんにちは。ナミです。
今回は、6月に訪れた展覧会まとめでも紹介した『イラストレーター 安西水丸展』のレポートです。
安西水丸さんは村上春樹さんの本の装丁を手掛けたことで有名ですが、それ以外にも漫画や絵本、広告、エッセイとマルチに活躍しています。
本展では、作品だけでなく水丸さんの人柄も知ることができて面白かったです。
わたしのように水丸さんを知らない人でも、水丸さんのことが好きになってしまうような展覧会でした。
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『イラストレーター 安西水丸展』の見どころ
この展覧会は、5つのセクションで構成されています。
ぼくの仕事
このセクションでは、装丁や絵本、漫画、広告など、水丸さんが手がけてきた多様な仕事が紹介されています。
水丸さんが手がけてきた装丁や装画は様々。
シンプルで親しみやすいイラストレーションが多くの書籍の表紙を飾りました。
装丁を手掛ける作品は、必ず読んでから仕事に取り組んでいたそうです。
水丸さんは、絵本も数多く手掛けています。
もしかしたら、幼少期に読んだことがある人もいるかも知れませんね。
個人的に印象的だったのはエッセイ。
水丸さんが熱中した旅や映画、日常の何気ない出来事などに挿絵が添えられたエッセイは、水丸さんの人柄がよく表れていてほっこりしました。
ぜひ、画像を拡大して読んでみてください。
このエッセイ本、読んでみたい。
ぼくと3人の作家
このセクションでは、水丸さんと特に親交の深かった3人の作家さんとの作品が紹介されています。
1人目は、村上春樹さん。
ハルキストなら見たことがあるイラストがたくさんあるかもしれませんね。
象工場のハッピーエンドの出版秘話を聞いて読んでみたくなりました。
村上さんをグリコの青年風に描いた表紙もユーモラスで面白い。
2人の仲が伺えます。
2人目は、和田誠さん。
同世代の彼は、憧れの存在であり、ライバルでもありました。
2001年に始まった2人展「NO IDEA」は、2人で1枚の作品を仕上げるというユニークな取り組みを行いました。
2人展は2014年まで続き、描かれた作品は200点を超えたそう。
絵の左半分が和田さん、右半分が水丸さんのイラストです。
タイトルの文字も、一文字一文字交代で書いたそうです。
片側が空白のままの原画も展示されていました。
この「村上春樹 雑文集」は、村上春樹、和田誠、安西水丸の合作です。
3人目は、嵐山光三郎さん。
水丸さんが出版社に勤めていた頃の同僚だそうです。
水丸さんが描いた様々な嵐山光三郎さん、とっても可愛らしいです。
ぼくの来た道
このセクションでは、イラストレーターを夢見ていた幼少期の頃の作品や、生涯愛した品々が紹介されています。
小学校の頃に描いた絵や、中学時代の授業ノートなんかも展示されています。
水丸さんは、幼少期を千倉で過ごしました。
その頃を振り返ったご本人のコメントがとても印象的でした。
今でもよく思うのですが、「私がもしパリで育っていればルーブル美術館で一流の絵画にいつも接することができたし、マドリードで育っていればプラド美術館でゴヤやベラスケスの絵にいつも接することができた」と。
会場内パネル「千倉のこと」より
その意味で千倉では一流の絵画に接する機会がありませんでした。
その代わり、千倉には「一流の海」がありました。
一流の海を見て育ったということは、パリやマドリードで一流の絵画に接して育ったのと同じ環境だと私は思っています。
刻々変わる海の色、潮騒、四季を彩る里山の艶やかな自然、風にそよぐ梢の葉、野鳥の声。
こうした自然以外に何もない環境が私の想像力や美意識を育んでくれたのだと思っています。
見ている世界の捉え方や言葉選びが美しくて、心をつかまれました。
水丸さんが愛したスノードームやブルーウィローのコレクションも展示されていました。
添えられた水丸さんのひとことが面白くて、読み入ってしまいます。
ぼくのイラストレーション
このセクションでは、水丸さんが描いた原画や本展のために復刻制作された作品などが展示されています。
水丸さんの描くイラストの多くに画面の中心を一本の線が横切っており、これを「ホリゾン(水平線)」と呼んでいます。
水丸さんは、ホリゾンについて次のように語っています。
ホリゾンを引くことで、例えばコーヒーカップはちゃんとテーブルの上に載っているイメージが出せるし、花瓶なら出窓の張り出しに飾られているイメージを出せる効果があるのです。
会場内パネル「ぼくのイラストレーション」より
そして、紙にホリゾンを引くとき、なぜかいつも千倉の海の水平線が目に浮かぶのです。
水丸さんの描く世界は、少なからず幼少期に見た千倉の風景からインスピレーションを受けているのかもしれません。
絵のタイトルにも物語があるなあと思いました。
こちらは、「夏の闇」という作品。
水丸さんのイラストがシンプルなのは、たくさん仕事を受けても絵の質が落ちないように、時間をかけずにかけるようにと考えられているからだそう。
仕事に対する姿勢も見て取れます。
色鉛筆で描かれた作品も展示されていました。
たびたびの旅
最後のセクションでは、旅にまつわる作品やコレクションが展示されています。
水丸さんは旅がとても好きだったようで、日本国内だけでなく世界中を旅していたそうです。
そんな水丸さんの旅のお供や旅先で手に入れたコレクションなどが紹介されていました。
またまた水丸さんのひとことが目に留まりました。
電車の旅の楽しさは、なんといっても車窓の風景にある。
ぼんやり眺めていても飽きることはない。
それにしても、人はたいていが絶景を求めて旅をしている。
旅先での名所はどこも絶景といわれる場所が多い。ぼくは違う。
会場内パネル「旅の風景のこと」より
何でもない車窓の風景が好きだ。
広がる田園や、名もない漁港に胸がきゅんとなる。
水丸さんが旅の途中でどんな景色を見ているのか想像することができるひとことです。
こういう景色に胸を躍らせることができるのも素敵です。
こちらは、出口付近にあった水丸さんの言葉。
水丸さんらしいなあと思ってしまいました。
『イラストレーター 安西水丸展』のチケット情報
本展は、当日券のみの販売です。
事前予約は不要です。
当日にチケットカウンターにて当日券を購入してください。
一般: 900円 / 65歳以上・大学・高校生: 600円 / 中・小学生: 300円 / 障がい者手帳をお持ちの方: 400円
『イラストレーター 安西水丸展』の混雑状況
わたしは、6月下旬水曜日の12時ごろに訪れました。
待ち時間無しで、スムーズに入れました。
お昼時ということもあって、会場内も空いていました。
ただ、時間が経つにつれて人が増えてきた印象です。
ゆっくり楽しみたい方は、午前中から正午にかけて訪れるのがおすすめです。
『イラストレーター 安西水丸展』の所要時間
かなりゆっくり鑑賞しながらで、滞在時間は2時間弱でした。
会場は広くないので、普通に鑑賞すれば1時間ほどで回れそうです。
『イラストレーター 安西水丸展』のお気に入りの1枚
毎回、一番気に入った作品のポストカードを購入しています。
今回選んだのはこちら。
「レストランの読書」という作品です。
印象的なホリゾンの描かれている作品を選びました。
シンプルで、見る人によって違う物語が読み取れる作品。
それもまた、水丸さんのイラストの魅力かもしれません。
基本情報
会場:世田谷文学館 2階展示室
アクセス:京王線芦花公園駅より徒歩5分
会期:2021年4月24日(土) – 9月20日(月・祝)
休館日:毎週月曜 ※ただし5月3日・8月9日・9月20日は開館、5月6日・8月10日は休館
開館時間:10:00~18:00 ※展覧会入場、ミュージアムショップの営業は17:30まで
チケット:事前予約不要、当日券のみ
備考:写真撮影可、動画撮影不可
今回は、世田谷文学館で開催中の『イラストレーター 安西水丸展』を紹介しました。
この写真は、本展一番最初に飛び込んでくるパネルです。
水丸さんの作品や人柄に触れてから見ると、この言葉はまさに水丸さんを表しているな~と思います。
わたしもすっかり安西水丸のファンになってしまいました。
とってもおすすめの展覧会です。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
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